賃貸経営メールマガジン

最高裁判決後の影響

更新料
2011/10/26

皆さんこんにちは。今回は佐々木が担当いたします。

今年3月24日および7月12日に敷引金について、7月15日には更新料について、それぞれ原則有効との判決が下されました。賃貸経営が危うくなるのではと危機感を感じていた大家さんや賃貸管理会社は、ほっと胸を撫で下ろしていることでしょう。それから数ヶ月経過した現在、賃貸業界において、具体的にどのような影響が出ているのでしょうか。今回はそれについて述べたいと思います。
今回、敷引金や更新料が有効になったことにより、新たに問題視されているのが、消費者の訴えや主張により、すでに返還してしまった敷引金や更新料について、貸主側が再びそれらを取り戻せるのかどうかということです。実際、今年9月8日に、京都地方裁判所に、貸主が敷引金および更新料の返還請求と、消費者側の弁護士に対する損害賠償請求を合わせて提訴する動きがありました。

平成22年12月、消費者側弁護士Aが、貸主Bに対して、消費者である賃借人への未返還敷金20万円および支払済み更新料12万6000円の返還を求める通知をしました。本賃貸借契約における敷引金および更新料は消費者契約法第10条に違反して無効であり、また、高等裁判所をはじめ、多くのケースでこれらが無効と判断されているため、裁判例としては確立しています。よって1週間以内に、敷引金および更新料の合計32万6000円を支払ってください。支払がない場合は、京都地裁に訴えを起こすとともに、適格消費者団体に対し、団体訴権に基づく差止請求の対象であることを通告します。というものです。

この通知を受け、貸主Bは、敷引金、更新料に返還義務があると信じ、それらを借主へ返還しました。ところが、敷引金や更新料共に、最高裁判所で、原則有効の判決が下されました。そのことを報道で知った貸主Bは、弁護士Aに連絡を取りましたが、対応してもらえず、返還してもらいたかったら訴えを起こしてくださいとのことでした。そこで貸主Bは、やむを得ず、借主に対して、敷引金および更新料の返還を請求すると共に、弁護士Aに対して損害賠償を請求する訴えを京都地裁に起こしました。

本件は、11月に口頭弁論の予定であり、裁判所の判断が注目されますが同様のケースは、数多く存在すると思われます。そして本件に習い、提訴される事案が今後増えていくことでしょう。
これとは別に、「更新料特約は無効だから、支払う義務はない」と貸主が支払を拒否しているものもあります。この場合、更新料特約は原則有効であることから、過去に借主が支払を拒んできた更新料に関して、貸主は請求できるとともに、本来の支払期日から支払に至るまでの遅延損害金も請求できるようです。このように、有効判決をうけて、さまざまな動きが見られます。特に、一度返還した敷引金や更新料を取り戻す訴えの動向については、注目していきたいと思いますし、この場でも述べていきたいと思います。
お付き合いありがとうございました。

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