賃貸経営メールマガジン

「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」が成立しました。

法律・条例・制度
2020/7/30

本年6月12日、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」が成立しました。

 

良好な居住環境を備えた賃貸住宅の安定的な確保を図るため、サブリース業者と所有者との間の賃貸借契約(マスターリース契約)の適正化のための措置を講ずるとともに、賃貸住宅管理業を営む者に係る登録制度を設け、その業務の適正な運営を確保することを目的としてこの法律が制定されました。

 

この法制化の背景には、昨今の賃貸住宅オーナーと管理業者との間のトラブル増加があるものと考えます。特にサブリース形態においては、特定の業者によるトラブルの内容が大きく報道されるなど、社会問題化している状況もあります。こうした状況を是正するため、法整備が進んだものと言えます。

 

この法律は、大きく分けて次の2つの項目から成り立っています。

 

サブリース業者と所有者との間の賃貸借契約の適正化に係る措置

オーナーとサブリース業者との間のトラブルを未然に防ぐため、すべてのサブリース業者の勧誘時や契約締結時に一定の規制を導入しています。(違反者に対しては、業務停止命令や罰金などの措置が設けられています。)

(1)誇大広告等の禁止
サブリース業者がマスターリース契約(本法では『特定賃貸借契約』という用語を用いています。)の条件について広告をするとき、サブリース業者が支払うべき家賃や、賃貸住宅の維持保全の実施方法、マスターリース契約の解除に関する事項などについて著しく事実に相違する表示や実際よりも著しく優良であると誤認させる表示は禁止されます。

(2)不当な勧誘行為の禁止
サブリース業者によるマスターリース契約勧誘時に、家賃の減額リスクなど相手方の判断に影響を及ぼす重要な事項について故意に事実を告げず、または不実を告げる行為は禁止されます。

(3)マスターリース契約締結前の重要事項の説明
マスターリース契約の締結前に、家賃、契約期間等を記載した書面を交付して説明しなければなりません。
サブリース形態で特にトラブルとなるのが、賃料に関する事です。マスターリース契約上、一定期間が経過すると賃料を改定(減額)できる内容が多く、オーナーの想定以上の減額を求められたり、場合によっては契約の規定以上の減額を求められたり、そもそもオーナーが減額を求められるという認識がなかったり・・・、など様々なトラブルが生じています。この点は本法においても特に注意が払われていることがわかります。

 

②賃貸住宅管理業に係る登録制度の創設

委託を受けて賃貸住宅管理業務(賃貸住宅の維持保全、金銭の管理)を行う者には、国土交通大臣の登録を義務付けています。※5年毎に更新

また、管理業者の業務実施において義務付けられる事項として、以下のように規定されています。

(1)業務管理者の配置
賃貸不動産経営管理士など賃貸住宅管理の知識・経験等を有する者を事務所毎に配置しなければなりません。

(2)管理受託契約締結前の重要事項の説明

具体的な管理業務の内容、実施方法等について書面を交付して   説明しなければなりません。

(3)財産の分別管理
管理する家賃等について、自己の固有の財産等と分別して管理しなければなりません。

(4)定期報告
業務の実施状況等について、管理受託契約の相手方に対して定期的に報告しなければなりません。

→管理戸数が一定規模未満の業者は登録義務の対象外とされ、業務管理者には宅建士も含める、など、中小事業者の負担軽減が盛り込まれているようですが、将来的にはこうした例外規定は廃止されるのではないかと感じます。特に賃貸不動産経営管理士については、その資格試験が今年度より宅建士と同じ出題数が50問、試験時間が2時間にそれぞれ増え、国家資格化や賃貸不動産経営管理士の配置義務化へ向けての動きが加速しているといえるでしょう。またオーナーに対する定期報告を義務付ける点は、サブリース契約の内容をオーナーに常に把握してもらい、オーナーがサブリース業者に任せきりにしてしまう状況を回避し、業務の透明化を図る意図があるのでしょう。

 

なお、本法の施行日ですが、①は公布日から1年以内、②は公布日から6ヶ月以内 と定められています。(ただし、施行日より1年間の経過措置があります。)

 

昨年、公益財団法人日本住宅総合センターが、

「民間賃貸住宅の供給実態調査」~供給主体やサブリース事業者の関与などを中心に~

という調査を実施し、その中で賃貸住宅の管理形態として、サブリースを含めて実に75%の賃貸物件において、管理を管理業者に委託しているという実態が明らかになっています。こうした状況からも賃貸管理業者の存在や役割は大きくなり続けています。

賃貸管理業者である弊社も、この法律の目的に沿って、トラブルの発生を未然に防ぐ努力を続け、オーナー様から支持される管理業者を常に目指していかなければならないと考えています。

 

 

運営推進事業部
岡野 明徳

 

 

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