賃貸物件における高齢者の受け入れについて

近年ではご高齢の方が増えており、日本をはじめ多くの先進国で深刻な社会的課題となっています。これは「高齢化社会」または「超高齢社会」と呼ばれており、2025年現在、日本では65歳以上の人口が全体の約30%近くに達し世界でも最も高い水準となっております。
本誌では、今後増え続けると予想される高齢者の受け入れ対策について考えてまいります。
賃貸物件においては、高齢者でも物件を借りることは可能ではありますが、年齢を理由に入居を断られるケースも少なくありません。その理由として、高齢者の入居で考えられるリスクは下記になります。
孤独死リスク:室内での死亡事故により心理的瑕疵物件になる可能性
家賃滞納 :収入が年金のみの場合、支払い能力に不安
緊急時の対応:急病や事故時の発見・対応が遅れる恐れ
→緊急連絡先がいない方や身寄りのない方が該当者だった場合、発見が遅れる可能性が高く、物件の価値が下がる恐れがある
設備の不足:バリアフリーではないため、転倒事故などのリスク
→エレベーター付きではなかったり、室内や共用部に手すりが無い物件も多いため転倒するリスクが高い
このようなリスクはどれも現実的ではありますが、オーナー様や管理会社の協力でリスクを軽減できる対策もあると考えます。
オーナー様や管理会社の対応策として
1. 孤独死対策:見守りサービスの導入
・見守りサービス業者と提携(例:ALSOK、セコムなど)
→月額数千円で導入可能で入居者も安心。
2. バリアフリー化・設備改善
・室内の段差を解消
・手すり設置(トイレ・浴室・玄関)
・滑りにくい床材への変更
3. 高齢者歓迎物件として差別化
・「高齢者可」「65歳以上歓迎」と明示することで空室対策にも有効
4. 入居契約時の工夫
・本人の意思確認・家族との連絡体制整備を徹底
・保証会社の利用を必須に
いかがでしょうか?
1と4の項目については、貸主様のリスクを軽減する方法として実現までのハードルが低いと思います。
また、政府の対策としては、住宅セーフティネット法が改正され、孤独死リスクや家賃滞納リスクが軽減される仕組みが導入されます。
まとめ
上記の対策を徐々に実施していくことで、高齢者を受け入れやすい環境が少しでも整うのではないでしょうか。高齢者に優しい物件に変えることで空室リスクの軽減が期待でき、社会としても受け入れ体制を整えていくことでどの世代にも平等に過ごしやすい環境が将来的に作れると考えます。しかしながら、当然導入費用やリスクを考えると入居は控えて欲しいという意見もあると思いますし、弊社でも高齢者の受け入れ体制を検討しているところです。
ただ高齢者を受け入れるのではなく、リスクを考慮し対策を考えた上で受け入れる必要がありますので、今後も引き続き受け入れ対策・体制を考えていけたらと思います。何かご相談等ありましたらお気軽に弊社までお問い合わせいただけますと幸いです。
営業統括本部 賃貸営業部
松本 渚