賃貸経営メールマガジン

火災保険で変わる立場の恐ろしさ

トラブル
2015/9/10

みなさんこんにちは、今回は火災保険のお話です。

突然ですが、こんな状況を思い浮かべてみてください。

 

【自分が所有する築20年のアパートの隣地に、もう長いこと誰も住んでおらず外壁はツタに覆われ、窓も割れたままとなっている一戸建ての古家がありました。ある時その古家から火災が発生し、自分のアパートにも火が燃え移ってしまったのです。

捜査の結果、火災原因は放火とわかったものの、加害者の特定には至っておりません。

自分のアパートには6戸中5世帯が入居しておりましたが、幸い人災は免れました。

ただしアパートは半焼した上、消火活動による放水で住戸のほとんどが水浸しとなり、結果、建物全体が通常使用できる状態を欠くこととなり、賃貸借契約は消滅することになってしまったのです。】

 

自分が所有するアパートが、隣地からの類焼により損害を受けたケースです。

アパートに住んでいた入居者は住まいを失った上、家財も損害を被りました。

このような火災事故が起きた時、?自分、?古家所有者、?アパート入居者、それぞれの火災保険の加入状況次第で、自分の立場は随分と異なってきます。

 

先ず火災原因が“放火”であり、?古家所有者の責めに帰さない事由の場合、失火責任法の適用により火災の類焼による損害賠償責任は追わなくて良いとされています。つまりアパートが燃えた損害は、古家が火元であっても所有者に責任追及できないのです。

放火犯が特定できない以上、そちらに損害賠償請求することも出来ません。

今回のケースで、例えば古家の管理状態が非常に悪く、日頃より近隣住民から放火の懸念や管理状態の悪さへの指摘を受け、取り壊すよう再三忠告されていたにも関わらず放置した等の事実があったとしても、道義的責任は感じても、実際に所有者が少しの注意も払っていれば事前に予見でき、放置が防止を怠った“重過失”にあたるといえるかを立証する必要があり、(何より悪いのは放火犯ですから、)法的責任を所有者に追及することは、現実的には非常に厳しいようです。

 

アパートの建て直しは自らアパートに掛けていた火災保険で直すことができますが、これがもし自分で火災保険に加入していなかったら、どうなるでしょう。

ローンを組む際に融資期間と同期間で火災保険にも加入することが一般的ですが、中には短期契約できちんと更新していなかったケースや、保険加入していても設定が再調達価格ではなく時価になっている等、アパート再建費用が足りないどころか、ローンだけが残ってしまったというのは最悪の事態です。

 

最後の可能性として?古家所有者が古家の火災保険には加入し続けており、さらに“類焼損害補償特約”を付けていた場合は、賠償責任の有無に関わらず火元から類焼先住戸へ保険金が支払われます。自分のアパートは火災保険に未加入であったとしても、再調達価格を上限として(類焼範囲により限度額はある)不足分が賠償されます。

ただし、上記の管理の行き届いていない古家のような場合、火災保険にすら入っていないケースが十分考えられます。また空き家は保険料が割高なため加入しない方や、空き家によっては保険会社から加入を断られる事例もあるようですので、“類焼損害補償特約”が付されている可能性はなお低いと言えるでしょう。

 

?アパート入居者は入居者自身が加入している家財保険によって、転居先が決まるまでの仮住まい費用や家財の損害を補償してもらうことが可能です。

入居者には何の過失も無いことから、入居者の保険からオーナーへの見舞金も当然発生しません。

 

以上のケースのように、自分に過失は無いにもかかわらず誰にも助けてもらえません。そんな窮地に追い込まれないためにも自分を守るべく火災保険には必ず加入し、再調達価格の補償範囲で加入することが望ましく、自分が重過失により近隣へ類焼させてしまう場合にも備え、類焼損害補償特約が付けられるとなお安心です。

皆さんのアパートはきちんとリスクに耐えられる状態になっているでしょうか。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

 

 

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