賃貸経営メールマガジン

心理的瑕疵の取扱いに関するガイドライン案を公表

入居者募集法律・条例・制度
2021/6/24

 

国土交通省が5月20日に、「宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取扱いに関するガイドライン(案)」を公表しました。
このガイドライン案に関する意見公募を6月18日まで行い、夏頃をめどに正式なガイドラインを発表するようです。

 

不動産取引において、取引の対象となる不動産で過去に生じた他殺や自死、事故死など人の死に関する心理的瑕疵について、現状では適切な告知や取扱いに係る判断基準がなく、取引現場での判断が難しいことで、円滑で安心できる取引が阻害されているとの指摘が多くあります。

 

「心理的瑕疵=自死=告知義務」といったイメージが大きいかと思いますが、自死だけが心理的瑕疵に該当する訳ではありません。上述の他殺や事故死といった人の死に関する事案以外にも、周辺環境や過去の使用用途等が該当することもあります。

 

賃貸経営においては、様々な内容の心理的瑕疵によって告知義務が原則発生しますが、自死によるものが圧倒的に多いかと思われます。
現状ですと告知義務の対象になるのか、また告知の期間や対応方法等に明確な定義が無く、
現場や取引当事者の判断によるものが多くなっていることからトラブルに発生することが多々あります。

 

実際に日本賃貸住宅管理協会の調査によると、心理的瑕疵の対象とする住戸等の位置は
「当該住戸のみ」が最も高く約7割でしたが、
「事故のレベルや騒ぎの有無等を考慮し範囲を決める」
「亡くなり方や場所により対象範囲を広げる」
など、統一感の無いものとなっています。

 

告知期間においては、「入居者1回入替え」が約35%でトップでしたが、
「内容により期間を設定」
「自死は数回だが、他殺は半永久」
「弁護士に相談」
「原則1回だが、認知度や入居期間により変更する場合あり」
など、こちらも業者によってばらつきがあり、また地域によっても違いが見られる結果となっていました。

 

この度の「心理的瑕疵の取扱いに関するガイドライン案」では、取引対象の居住用不動産において生じた人の死に関する事案を取り扱っており、
・自然死又は日常生活の中で不慮の事故の死が発生した場合
・賃貸借契約について、告げるべき内容や範囲
について明記しています。

 

内容としては、『事案発生から概ね3年間の告知義務があり』とあり、
他殺・自死・事故死・特殊清掃等が行われた場合の死等が挙げられています。

 

事故死においては、階段からの転落や入浴中の転倒事故、食事中の誤嚥など日常生活の中で生じた不慮の事故による死については、そのような死が生ずることは当然に予想されるものであり、これが不動産取引上重要な影響を及ぼす可能性は低いとし、告知の必要はないものとされています。
また、特殊清掃等と明記がありますが、いわゆる「孤独死」が対象となるかと思われます。
ガイドライン案上では、「自然死」と明記していますが、「孤独死」は今後さらに増加していくと予想されており、賃貸経営をしていく中でいつか直面することになるかもしれません。
自然死・孤独死においては告知の必要は無いとされていますが、長期間にわたって放置されたことにより、室内外に臭気・害虫等が発生し、特殊清掃等が行われた場合は告知の必要があると明記されました。

 

今回はまだ「ガイドライン案」ですので、物件内で事件が発生し、運ばれた先の病院で死亡した場合に関しては明記せず、今後の課題となっていることや、意見公募の内容により追記や変更される可能性があります。
しかしながらこれまで不確定要素が多かった告知事項に関する問題が少しずつ明確化されることにより、不必要なトラブルを避けられるようになるかと思いますので、今後に注目していきたいと思います。

 

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

 

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