賃貸経営メールマガジン

【警鐘】収益物件購入・新築賃貸計画時の重要確認事項 ~新規賃貸建築ご計画の方も必読です~

法律・条例・制度家賃滞納購入・売却投資サブリース
2023/10/19

先日、不動産業界において、由々しき事態であるのではないかと個人的に思える記事を見かけました。由々しき事態にもかかわらず、あまり大々的な報道にまで発展しておらず、皆様の目に触れない可能性がありましたので、その記事内容についてご紹介させて頂き警鐘を鳴らさせて頂きます。

 

貸経営をされる方々にとっては、今回の問題は収益物件を今後購入するにあたって直面する可能性がありますし、物件購入のみならず新築計画時の注意点としても通ずるものがあると思いますので、是非最後までお付き合いいただきたく思います。

 

では、その記事内容に触れていきます。
2023年9月25日に発行されました全国賃貸住宅新聞の一面に
≪逆ざや説明せず販売、不法行為~不動産仲介会社らに賠償命令~≫
の見出しの記事が掲載されていました。

問題になりましたのは、マスターリース(サブリース)契約をセットにした収益不動産の販売手法でした。とある不動産オーナーが不動産売買仲介を通し、マスターリース契約がセットされた収益物件を購入したのですが、実はその収益物件には隠れた実態があったのです。
隠れた実態と表現させて頂いたぐらいですから、その不動産オーナーはその実態については説明または明示を受けず、購入していたとのことでした。

 

その収益物件にセットされたマスターリース契約は簡単に
サブリース賃料 9万4,000円 (転貸借の原則賃料)
・マスターリース賃料 8万500円 (オーナーへの支払い賃料)
のように、サブリース賃料の約85~86%程度で借上げるマスターリース賃料条件でした。

 

サブリース賃料はあくまでも実際に入居する或いはお部屋を賃貸借契約される方との間の転貸借時に目指す賃料です。そのため入居者募集時期がゴールデンウィークやお盆休み、その他の閑散期と呼ばれる時期であったり、直近ではコロナ禍のような社会情勢、告知事項になり得るほどの心理的瑕疵に発展する事故や事件が起きてしまった等、様々な影響で空室期間が長くなってしまった際に、賃料を減額(下落)させて成約させる場合があります。
そして、その減額幅はその時々の事由によって様々です。

相当な例外のお話ですが、実際の成約賃料がマスターリース賃料を割り込むことも稀にあるのかもしれません。

しかしながら、相当な例外であって多くの場合はマスターリース賃料を割り込むことはありません。

今回のケースは驚くことに、
・実際の成約賃料が4万2,000円
・実際の成約管理費が8,000円
合計月額賃料は5万円の成約賃料でした。

 

先程のマスターリース契約の賃料条件を思い出してみてください。
マスターリース賃料は8万500円でしたから、3万500円の逆ざやに陥っている実態が隠れていたのです。
サブリース賃料9万4,000円から比較しますと、あと3,000円下がったら半額ですので、心理的瑕疵がある物件なのかと見間違うほどの逆ざやの状況であると言えます。

ということで、この不動産オーナーとマスターリース契約を締結していた管理会社は毎月3万500円の負担の持出を継続していました。

『逆ざやでも、しっかりとマスターリース契約賃料が毎月入ってくればいいじゃないか』
という、ご意見・ご感想をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、もしこのようなごご意見・ご感想に感じられましたら、要注意です。

 

当然ながら、企業・会社というものは、事業を行い利益を追求することで、維持または成長をしていきます。利益を出すどころか毎月3万500円の損害を出しながら、自転車操業にもなっていない火の車で運営を行っていくことは継続性に疑問が生じます。
2019年12月の物件購入日から2年も経たないうちにマスターリース賃料は必然的に未納となり、不動産オーナーへの支払いは滞りました。

また、ほとんどのマスターリース契約はマスターリース賃料の見直しの期間・機会があります。仮に今回未納とならなかった場合でも、おそらくマスターリース賃料の大幅な減額見直しを迫られた可能性が高いと推測します。

 

今回の問題は本記事の執筆時点で、東京地裁にての損害賠償請求裁判で逆ざや状態であることの説明を購入者である不動産オーナーにせずに販売した行為を不法行為として認めました。
そして、今回の売買取引を仲介した業者だけではなくマスターリース契約の管理会社含む計3社に対し、損害賠償が命じられております。

損害額は実際の成約賃料である5万円で購入時に提示されていた利回りとの同条件で算出した価格と実際に購入した価格との差額が採用認定されました。

※本件はまだ東京地裁にての判決であることと被告側が控訴を検討中とのことですので、今後新たな事実が判明し認定される等により、判決内容が変更されることがあり確定判決ではないことをご留意ください。

 

どうして今回のようなことが起きたのでしょうか?

あくまでも推測ですが、価格が高くても高利回りの物件はとても魅力的に映りやすいため、高く売り出すことがしやすくなります。おそらく今回販売を仲介した業者は高い売出価格でも高い利回り表示ができるようにしたかったのではないかと思います。

また、新築賃貸計画時のマスターリース提案も例外ではありません。高すぎる提案賃料で知収支計画をしてしまいますと、マスターリース賃料の見直し期間が2年間であった場合、2年後に賃料を大幅に下げられてしまう可能性が高まります。そうなると、見込み通りの収支計画が著しく狂ってしまう可能性があります。

賃料相場を逸脱し無理をしている物件は、逆ざやまでいかなくとも想像以上の空室期間が原因で通常の相場賃料よりも下落する危険性があるのです。また、思いもよらない大変大きな支出の必要性が発生することもあります。

 

巷で昨今の賃貸市場は賃料が上昇傾向にあるとよく耳にします。弊社も普段オーナー様方への新築賃貸物件のマスターリース契約商談の際に、他社さんはもっと高い賃料の提案だった等のお話を伺い、それが今まででは考えられない驚く賃料であることが多々あります。今回のケースは実際は低い賃料で成約しているというケースですが、昨今のマスターリース提案は、契約を取りやすくするための非常に高い賃料の提案が多くなったことで、賃貸市場が賃料上昇傾向に思えるようになったのではないかと感じます。

 

現在はガソリン価格高騰をはじめ、様々なモノの値段が物価高となり、かつ増税傾向で納税の国民負担割合が増加していき、生活苦に陥られる方もどちらかというと増加していく可能性が高いなか、居住する住宅の費用で調整される方も多くなっていくのではないかとも思えます。

原則モノの値段・価格は需要と供給で決まっていきます。本当の意味で賃料が上がっているのかも疑問符がつくのではないかと考えます。

 

今回は収益物件購入時の隠れた成約賃料の実態でしたが、他にも昨今のマスターリース契約には隠れた実態が存在します。

また、売買仲介業者や建築会社等は賃貸市場や慣習に対して専門ではありませんので、故意ではなく、どうしても説明が漏れてしまう可能性も否めません。

弊社は賃貸市場や慣習について熟知しておりますので、収益物件購入や新築賃貸計画の際にはいつでもお気軽にご相談ください。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

 

本店 アンサー事業部
夏 啓安

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