賃貸経営メールマガジン

放置自転車やバイク撤去時のリスクについて

法律・条例・制度トラブル
2025/6/19

今回は、「敷地内に放置された自転車やバイク撤去時のリスク」についてお話しさせていただきたいと思います。
2025年に、京都府内のマンション駐輪場に放置されていたバイクの撤去をめぐり、大阪高裁で注目の判決が下されました。

 

【概要】
マンション駐輪場に約3年間、駐輪シールの貼付けもなく、ハチの巣まで作られていたバイクを所有者(マンション入居者)の同意を得た上で撤去したはずだったが、のちに訴訟トラブルに発展。

 

【判決】
入居者側が京都地裁に提訴した約40万円の損害賠償は棄却されたが、その後大阪高裁が「違法に所有権を侵害した」ということで管理会社側に「計7万3千円」の賠償を命じた。

 

【争点・判決ポイント】
1. バイクのタイヤはパンクしており、「ハチの巣ができている」という報告を受け管理会社側で駆除したこともあった。

2. 何度も警告文を貼り付けたが応答がなかったため、撤去に踏み切る。

3. 撤去時バイクシート内に所有者の特定ができる書類が入っていたため電話連絡し、同意を得た上で撤去。

 

上記3点を踏まえると一見問題がないように見受けられますが、大阪高裁は「管理会社側の説明に虚偽があった」という理由で賠償を命じることになりました。

 

管理会社による所有者への電話連絡による説得時に所有者は「確かに3年間ほど利用していないが、今後は運転するので撤去しないで」といった意思表示をしていましたが、これに対して管理会社は「警察と弁護士にも相談し撤去を実施しているので、今更覆らない。同意してもらわないと困る。放置車両はこちらに撤去する権利がある。」といった説明をしたようです。

 

実際には管理会社側が警察や弁護士に相談した事実はなく、法的な権利関係を把握していたわけではありませんでしたが、所有者は管理会社側の説明を受け「同意するしかない」と諦める形での同意となりました。

 

のちに経緯を聞いた所有者の妻が納得せず、「管理会社側の誤った説明により同意するしかないと勘違いしたため、撤去は正当ではない」と京都地裁に約40万円の損害賠償を求め提訴しましたが、地裁ではこれに対し放置されたバイクを利用するには相当の整備費がかかるであろうとの見解を示し、「処分費用がかからないという説明を受け同意する動機があり得た」と指摘し、必ずしも勘違いであったとは認められないと棄却しています。

 

これに対して大阪地裁は、管理会社側に「バイクの時価:1万3千円+慰謝料:5万円+弁護士費用:1万円=計7万3千円」の賠償を命じました。

 

撤去直前に管理会社が放置バイクの写真をマンション内に掲示し予告しており、これに気付いた所有者が駐輪シールの交付を申請していましたが、管理会社のミスで発行されないまま撤去に至りました。

 

高裁はこれを踏まえ、「所有者は放置状態を改め、運転する意思を有していた」と判断し、地裁で認めらえなかった「管理会社側の誤った説明による勘違い」についても認め、管理会社側の対応を「違法に所有権を侵害した」と結論付けました。

 

我々のような管理会社にとって自転車・バイク・自動車等の放置トラブル対応は物件の維持管理において重要な業務となりますが、同時に比較的頻度の高い業務となるためマニュアル的な対応になりやすいのも事実でございます。

 

今回当事者となった管理会社についても一部慣れにより招いたトラブルであったようにも感じましたので、弊社としましても引き続き慎重な対応を心掛けて参りたいと思います。

 

統括本部 賃貸管理部
森谷 翔太

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