賃貸経営メールマガジン

賃貸契約更新時に定期借家契約に変えることは可能か?

法律・条例・制度
2025/6/26

賃貸物件のオーナー様で、現在は物件を賃貸住宅として運用をしているが、いずれその物件に住みたい、賃貸入居者が存在しない空き家の状態で売却したい、建て替えを視野に入れている、などの事情が生じた際に、契約中の賃貸借契約の更新の時期に、これまでの普通借家契約から定期借家契約へ変えることにより、定期借家契約の期間満了をもって借主に退去をしてもらうことを検討されている方がいらっしゃいます。

従来の普通借家契約では、建物を賃貸すると、貸主は「正当な事由」がなければ借主からの契約更新を拒むことが出来ません。正当な事由とは、
・建物の賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情
・建物の賃貸借に関する従前の経過
・建物の利用状況及び建物の現況
・建物の賃貸人が建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出
とされています。

普通借家契約の更新を拒むにはこうした事由が必要となることから、定期借家契約への変更という方法を考えていらっしゃるようです。

まず、そもそも定期借家契約に変えることができない場合があります。それは、定期借家契約制度が導入された平成12年3月1日以前に締結された居住用建物の普通借家契約は、変えることが出来ません。現在締結されている普通賃貸借契約がいつ締結されているのか、確認が重要です。

では平成12年3月1日以降に締結された普通借家契約を定期借家契約に変えるには何が必要か、それは借主と貸主が変更について合意できれば、普通借家契約を終了させて新たに定期借家契約を締結することは可能です。

 

これまで借主自身の都合で解約・退去が可能であった契約形態から、契約期間満了をもって退去しなければならないという契約形態に変わるということは、借主にとって新たな大きなデメリットになります。(引っ越しや転居先探しが必要になり、諸々の費用負担なども発生します。)この点を借主が誤解のないよう、正しく契約の主旨・内容を十分に理解してもらうよう丁寧に説明をして合意を取り付けることが何よりも重要になります。

更新時に普通賃貸借契約が終了するかのように借主に誤信させたり、貸主が定期借家契約への変更を強制できるかのように振舞ったりすることで、仮に借主からの合意を取り付けたとしても、後々トラブルに発展する可能性があります。

この点を考慮して定期借家契約の締結にあたっては、必ず契約書によって契約を締結すること、この賃貸借は更新がなく、契約期間の満了により終了する旨を契約書とは別に書面を交付して説明することが義務付けられています。

ちなみに 不動産情報サービスのアットホーム㈱の定期借家物件に関する調査(2023年度)によると、賃貸アパートについて、募集物件に占める定期借家契約物件の割合は、
東京23区  5.2%
東京都下  2.9%
神奈川県  3.5%
埼玉県   1.3%
千葉県   1.2%
というデータになっています。

定期借家契約制度の導入からかなりの時間が経過していますが、募集物件ベースでみると1割にも満たない実態が見て取れます。定期借家契約がなかなか普及しない理由として、いろいろと指摘はされているようですが、借主の立場から見ると、契約期間満了をもって退去しなければならない契約であるという点が影響しているのかもしれません。

 

借主の合意が重要であり、合意を取り付けることが出来れば、普通借家契約を定期借家契約に変えることは可能ではありますが、現実的に定期借家契約への変更は非常にハードルが高いと言えます。何よりも借主から合意を取り付けることが非常に困難であることが容易に予測できます。

 

オーナー様にとって定期借家契約への変更についての緊急性、必要性がどの程度のものなのか、その状況を踏まえて定期借家契約への変更は、慎重な検討が必要であると考えます。たとえば、借主都合で普通借家契約が解約となり、次の借主募集にあたっては当初から定期借家契約という条件で新たに借主を募集するなど、負担なくスムーズに定期借家契約へ移行する手立てを弊社からもご提案をして参りたいと考えておりますので、お困りの際にはご相談ください。

 

賃貸管理部 契約管理課
岡野 明徳

PICK UP
全カテゴリー注目NO1

RECOMMEND
オススメ記事

TOP