外壁のツタは悪者なのか
気温も高くなってきて、草木が青々と生い茂る季節となりました。そんな中厄介なのが、どこからでも生えてくる雑草。多少の雑草には目をつぶって夏をやり過ごしている方も多いのではないでしょうか。雑草の成長スピードの速さには、驚くものがあります。特に、ツタの類は毎日数センチ成長し、外壁さえもつたって上に伸びていきます。
壁にツタ類を生育させることは、壁面緑化やグリーンウォールなどと呼ばれ、環境への問題意識の高まりを受けて注目されています。ツタは、「雑草」という面と「都市の緑」としての役割、2つの見られ方をしている植物なのです。
皆様が建物を所有するにあたって、外構にツタが生えてきた場合、それをどのように捉えるべきでしょうか。ツタが生えるメリットとデメリットを比較して考える必要がありそうです。
メリット
1.断熱効果・省エネ効果
夏場は厳しい直射日光からの熱を防ぐため、冷房にかかる電気代を節約しつつ、室内で快適に過ごせるのはうれしいですね。
2.おしゃれ
無機質な外壁もツタが生えることで、個性的でおしゃれな外観になります。
特にレンガ調の外壁にツタを這わせれば外国のおうちのようなレトロな雰囲気に。
3.空気の浄化
壁面の植物が水と光を得て光合成を行うことで二酸化炭素が吸収され、酸素が放出されます。植物によって建物周辺の空気が入れ替わり、浄化されます。
4.癒し
人工物ばかりの街で、少しでも緑があるとほっとしませんか。自然の緑が通る人の心を癒す効果があります。
このように、ツタを生やすことにはメリットがたくさんあります。また、地球温暖化やヒートアイランド化の防止に効果があるとして、自治体によっては壁面緑化に補助金が出る場合もあります。
デメリット
1.虫の発生
アリやムカデなどが住み着くのはもちろん、ゴキブリが発生して室内への侵入を手助けしてしまうことになります。
2.外壁が痛む
ツタの成長力は凄まじいものがあります。ツタの成長を放置すると、外壁に根を張る・壁のつなぎ目に食い込む・雨どいなどに絡んで破損の原因になるなどの恐れがあります。また、外壁メンテナンスの際に邪魔になってしまいます。
3.除去が難しい
一度外壁に這ってしまったツタは、除去するのが難しいです。力ずくで引っ張ると外壁を痛めてしまううえに、塗装がはがれてしまいかえって見栄えが悪くなることがあります。また、生命力が強いため、根本を切ったくらいでは、すぐにまた生えてきてしまいます。
外壁にツタを這わせることが、建物管理の側面から考えると、ハードルが高いということがわかります。
・ワイヤーネットを利用し、外壁にツタが絡まないようにする
・こまめに手入れをし、生育の程度や方向を管理する
ことが、建物管理とツタの生育を両立するために必要となります。
外壁に這うツタは、多くのメリットもあるため一概に悪いものとは言えませんが、よく管理をしないとただの悪者になってしまいます。
そのため、ツタの手入れに時間と手間をかけることができない場合には、土に防草シートを貼ったり、ツタの抜根や除草剤の散布を行ったりすることで、ツタの生育を防ぐ方が、物件の維持管理のためには得策かもしれません。
最近では、手入れが不要で枯れてしまうこともない、屋外使用可能なフェイクグリーン(人工観葉植物)を取り付けることでツタを生やすいくつかのメリットを感じることもできます。自分にできる範囲で、建物の緑を楽しむのが、良いのではないでしょうか。